静けさが在る
静けさの中に(声)が潜んでいる
夜に生まれる露のように
(声)は満ちてゆく
(声)は存在の証ではなく
静かな(影)でしかない
(声)の彼方に(時)が待っている
無数の(声)を待つ無数の(時)が
耳を澄ませて待っている
ふいにまたひとつ(声)が立ち昇り
夜明けに吹く風の速さで野を渡ってゆく
ここに(声)が放たれたまま浮かんでいる
まるで(声)であることを恥じるように
(声)のままにそこに在る
すると風のように(時)がやってきて
(声)を連れ去っていった
誰にも届かなかった(声)を知る者はいない